本を送りません宣言

提供:saveMLAK
ナビゲーションに移動 検索に移動

「本を送りません宣言」(仮称)[編集]

本を送りません宣言は、あくまで第一版です。ご意見を賜りつつ、改訂していきます。また、この宣言は、便宜上saveMLAKのサーバーで公開しますが、saveMLAKのものではなく、同じ意識の方々全員の名義で出すものと考えています。賛同署名もどうぞ。

<前文>[編集]

災害等の非常時に、支援物資として被災地に「本」を送る活動が広く行われています。2011年3月11日に発生した東日本大震災においても、同様の行為が広く見受けられます。様々な方々の善意の現われと言えるでしょう。

しかし、私たちはここでいったん歩みを止めて、考えてみたいと思います。被災地や被災者に「本を送る」という行為は、支援活動として本当に妥当なものでしょうか。訪ね歩いた被災地の多くで、対処に困る状態になっている数々の本を目にしてきました。支援者の善意に感謝しつつも、困惑する被災者の姿も目にします。支援したいという一人ひとりの気持ちを大事にしつつも、私たちはこう宣言したいと思います。「被災地に本は送りません」と。

<「本を送りません宣言」本文>[編集]

  1. 本を送るという行為は、本を贈る(プレゼントする)という行為です。私たちは通常、少なくとも「古本」を大切な誰かに贈りません。
    • ですから、私たちは被災地や被災者に「古本」は贈りません。
  2. 本は重くかさばり、場所をとります。実は本はたいへん扱いにくいものであり、被災地の限られた空間や人手を奪います。
    • ですから、私たちはこの事実を常に意識し、被災地に古本を送りません。また、新品を贈ることにも慎重にふるまいます。
  3. 被災地には「本」で営みを立てている方々もいます。善意に基づいて大量に送られる本は、実は被災地にある書店等の「知」の経済環境を破壊します。
    • ですから、私たちは、新品を含め、被災地や被災者に「本」を送りません。

<「本を送りません宣言」解説>[編集]

この宣言を初めてご覧になった方は、どのように感じられたでしょうか。もしかすると、自分の善意を否定されたかのような印象をお持ちかもしれません。もちろん、私たちもあなたの善意を否定するつもりはまったくありません。

ですが、善意はときとしてもろ刃の剣になってしまいます。あなたが善意で送った本が、被災地や被災者、そして他の支援者に大きな迷惑を与えることがもしあれば、それはあなたの本意ではないでしょう。被災地や被災者を思うあなたの善意は気高く素晴らしいものです。だからこそ、あなたの善意を無にしないためにも、この宣言にご理解を賜れれば、そして賛同のご署名をいただければ幸いです。




さて、それでも本を送りたいのであれば、被災地や被災者の要望を十分に把握できていること、あるいはあなたと被災地や被災者をつなぐ信頼できる支援団体や支援者と関係を築いていることを前提に、以下の目安をご参照ください。ただし、繰り返しますが、本を送る行為を、私たちは勧めません。目安の中でも詳しく述べますが、せめて、集めて売ることまでに留めるよう強く望みます。

<それでも「本を送る」際の目安10ヶ条>[編集]

  1. 「送る」のではなく「贈る」ととらえ、あなたが被災者になったときのことを想像し、そのとき、もらって嬉しいと心の底から思える本を選びましょう。
    • 被災地や被災者にどのような本がほしいかを安易に尋ねるのも、相手の負担になることがあります。
  2. 被災地に直接、本を配送することや、持参することや、寄贈の問い合わせをすることは控えましょう。たとえ、それが善意であっても、被災者は断ることができません。私たちの想像力が問われます。
    • 信頼できる支援者や支援団体にまずは一度相談しましょう。また、あなたのお住まいの地域の公共図書館に相談してみてもよいでしょう。
  3. どれほど思い入れがある本であっても、古本は送らないようにしましょう。古本は、被災地の衛生状態によっては、感染症の元となる可能性もあります。
    • 古本はバザーやフリーマーケットで売り、現金にして支援に役立てるほうが効果的です。
  4. その時の災害等の状況をよく理解し、適切な内容の本であるかを十分に吟味しましょう。たとえば、津波被災地に津波を描いた作品を送るべきでしょうか。
    • 他方、たとえば津波の本を送らないことが常に正しいとも言えません。
  5. 送った本のその後を詮索しないようにしましょう。「送る」ということは「贈る」ということであり、送った時点でもうあなたのものではないのです。
    • 送られてきた本を読もうが捨てようが、それは受け取った方々の自由です。
  6. あなたや周囲の方々が集めた本は、チャリティーバザーやチャリティーフリーマーケットを開いて売りましょう。その売上を本に関わる支援者・支援団体に寄付することで、あなたの善意は被災者や被災地に届くはずです。
    • チャリティーイベントの開催は、それ自体が大きな支援になります。
  7. 送るために本を梱包するなら、女性の力でも、一人で持ち運べる重さと大きさで段ボールに詰めましょう。
    • まとまった量の本は想像以上に重いのです。それが何箱もあることを想像しましょう。
  8. 本を段ボールに詰めたら、その中に入っている本のリストを作成しましょう。もし、リストをつくれなければ、せめて詰める本一式の背表紙を写真にとりましょう。
    • リストや写真は必ず段ボールの側面に貼り付けます。上面に貼ると、段ボールを積み上げると見えなくなってしまいます。
  9. 本を段ボールに詰める際には、次の2つの方法をとりましょう。1つは、特定のジャンルの本だけをまとめて1箱に入れる方法です。もう1つは、一家三世代の誰もが楽しめる本をまんべんなく入れる方法です。
    • 後者の方法については、不忍ブックストリートによる「一箱古本市」の活動が参考になります。
  10. 絵本を送ることには慎重でありましょう。絵本は素晴らしいものですが、「読み聞かせ」の必要が生じ、周囲の大人が時間を割かなくてはいけません。
    • 「読み聞かせ」は、ときとして被災者の負担になることがあります。他方、読み聞かせる必要が少ないマンガは好まれる傾向にあるようです。また、長時間読みふけることができる、読みとおすまで何日かかかるという点で、長編マンガが好まれます。

被災地の状況は、地域や時間によって大きく異なります。たとえば、同じ自治体であっても、山間部と沿岸部では、被災の状況や程度が異なります。また、時間の経過とともに支援のニーズは絶えず変化していきます。このため、以前は喜ばれた支援であっても、いまは歓迎されない支援になることがあります。このような違いや変化を慎重に見極めることは、あらゆる支援活動に共通して必要なことでもあります。

以上。

<履歴>[編集]

2012年1月17日:第一版公開


<この宣言に賛同する個人・法人(賛同順)>[編集]

  • 岡本 真(saveMLAKプロジェクトリーダー、アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
  • 江草 由佳(saveMLAKプロジェクト、国立教育政策研究所)
  • 川上 努(saveMLAKプロジェクト、G-Links)
  • 山森 光陽(先生おでんせプロジェクト実行委員会事務局長、国立教育政策研究所)
  • 渡辺 一馬(一般社団法人ワカツク)
  • 森 なを子(saveMLAKプロジェクト、白梅学園大学・短期大学図書館)
  • 富永 一也(公益財団法人沖縄県文化振興会)
  • 高久 雅生(物質・材料研究機構、情報知識学会 理事)
  • 外田 祥子(個人)
  • 三輪 佳子(著述業、電脳猫屋敷株式会社)
  • 長谷川 豊祐(鶴見大学図書館)
  • 嶋田 学(瀬戸内市新図書館準備担当 参事)
  • 小出 いずみ(公益財団法人渋沢栄一記念財団)
  • 門倉 百合子(個人)
  • 茂原 暢(公益財団法人渋沢栄一記念財団、専門図書館ML管理人)
  • ふじたまさえ(saveMLAKプロジェクト)
  • 多賀谷 津也子(大阪芸術大学図書館)
  • 小山 信弥 (関東学院大学)
  • 小野寺 志保(アルファデザイン)
  • 佐藤 理樹(アルファデザイン)
  • 花田 一郎(個人)
  • 潟沼 潤(みなとみらい大学)
  • 阪田 蓉子(個人)
  • 谷合 佳代子(エル・ライブラリー<大阪産業労働資料館>)
  • 八尋 芙美子(西南学院大学図書館)
  • 鎌倉 幸子(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)
  • 市川 斉(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)
  • 持田 誠(帯広百年記念館)
  • 佐藤 信明(個人)
  • 神代 浩(saveMLAKプロジェクト、国立教育政策研究所)
  • 中山 美由紀(東京学芸大学学校図書館運営専門委員会 東京学芸大学附属小金井小学校)
  • 大内 猶四郎(パソコン診療所、福島県田村市)
  • 石山 城(石山城プランニングオフィス 代表)
  • 宮田 ユウゾウ(togoshi.com)
  • 角田 善一(個人)
  • カトリヒデトシ(個人)
  • 杉浦 直樹(個人)
  • 菊村 準人(個人)
  • 畠中 朋子(個人)
  • 小嶋 智美
  • 葵 和奏 (個人)

(Independent Librarian) ※ご賛同いただける方は、「編集」を押して、ご署名くださるようお願いいたします。